▲こういうお人形さんが好きです。
このおじいさんは、紡錘車で糸にヨリをかけています。
▲出土した紡錘車。コマのように回転させ、糸を撚糸してゆきます。
麻や苧麻(からむし)は、ひたすら割いてつなげてゆき、糸を作るのですが、
このように糸に回転をかけることで強度がまします。
紡錘車の下には、ほそーーい苧麻が。
繊維が強靭な苧麻は細く割くことができるので、そのほそーい糸で織ったものは、
夏用の高級衣料品としてもてはやされました。
髪の毛よりも、まだ細く。
絣の精巧にタテヨコあわさった越後上布など見ると、背中がぞっとします。
わたし、大ざっぱなので、こういう根をつめた仕事は、考えただけで気が遠くなるのです。。。
鈴木牧之の『北越雪譜』を思い出しました。
こういうほそーい苧麻糸で織るのは、14・5〜24・5歳という、うら若い女性たちでした。
老眼が入るとまずいらしいのです。
特に上等の布を織るときは、精進潔斎をして機屋にこもったそうです。
それくらい、気合をいれないといけなかったのでしょう。
ある娘が上等の縮(ちぢみ)の注文をうけ、喜び勇み、
糸作りからはじめ織りまで、丹念に心をくだいて製作に打ち込みました。
ところが、晒しから返ってきた布に、小さなシミができていました。
かかさま いかにせん、かなしやと縮を顔にあてて
哭(なき)倒れけるが、
これより発狂(きちがひ)となり
さまざまの浪言(らうげん)をののしりて
家内を狂ひはしるを見て、
両親(ふたおや)娘が丹精したる
心の内をおもひやりて哭にけり
彼女は、発狂してしまいました。
彼女たちを機にむかわせたのは、誇りと、製作の喜び、達成感だったでしょう。
こころを研ぎ澄ませて丹念に糸を割き、丁寧に績み、織りあげて、、、
そして得られる報酬は、わずかなものであったといいます。
上布は、江戸などの都市で、富裕層により消費されました。
心と身を、削るのと引き換えに、織りあげられた衣。
大切に、着てもらえたでしょうか。